自分の標準報酬月額は早見表で確認してください。
休職中の生活を支えてくれる傷病手当金ですが、今、あなたが休職した場合にいったいいくらくらいもらえるのか、把握していますか?
おおよそ月額給与の2/3と言われることが多いですが、無収入となる期間の唯一の生活防衛資金となりますので、正確な数字を把握して万が一の生活シミュレーションをしておくと自分も家族も安心ですよね。
本ページでは、具体的な計算式と早見表のほか、支給額が減額される注意点などを紹介しています。また傷病手当金の平均的なデータとして産業別や性別、平均的な受給金額や申請期間もまとめましたので参考にしてみてください。
健康保険の傷病手当金はいくらもらえる?
傷病手当金は標準報酬月額による
傷病手当金の支給額は、休職する前の給与の3分の2であることは冒頭にも述べたとおりです。
基準となる休職前の給与ですが、これは【標準報酬月額】によって変動します。標準報酬月額は、各種保険料の算定のために、月額で支払っている給与を一定の金額幅で区分した等級のことです。
等級は全部で50段階あり、社会保険料の算定は毎年4月から6月に支給された月額報酬の総額(基本給・残業代・各種手当てなどの合計)の標準報酬月額で決定されます。
標準報酬月額を算出する計算式と等級ごとの傷病手当金(日額)をまとめました。正確な金額は12か月の平均ですのでご自身で計算してください。残業を除けば年間で大きく変動するような数字ではありませんので自分の等級をおおよその参考にしてください。
傷病手当金の支給額早見表
■傷病手当金の早見表の使い方
・自分の等級を確認する。記載は11~30等級(月給138,000~515,000円)までですが等級は全部で1~50まであります。
・標準報酬月額は所属する組合や地域によって変動します。例は加入者数の最も多い全国健康保険協会(協会けんぽ)の東京を掲載しています。協会けんぽ加入の場合は下記より該当する地域の最新の情報を確認してください。
協会けんぽ(令和5年度保険料額表)地域ごとのページに移動します
健康保険料(協会けんぽ 東京の場合)
標準報酬月額に変更がない場合
<CASE>
・休業前の標準報酬月額の平均額:30万円
・休業した日数:180日
計算式
【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
【30万円】 ÷ 30日 ×(2/3) = 6,667円
傷病手当金の一日当たりの金額が6,667円となり、180日休んだ場合は待期期間の3日間が引かれ6,667円×177日間となり、合計で約118万円を受け取れることになります。
標準報酬月額に変更がある場合
支給開始日以前の12ヶ月の間に、標準報酬月額の変更があった場合の計算は下記の通りです。
<CASE>
・支給開始日以前12ヶ月間のうち最初の3ヶ月は30万円(6,667)、9ヶ月は34万円(7,553)
・休業した日数:180日
上記の場合、計算式はこのようになります。
【(30万円×3ヶ月+34万円×9ヶ月)÷12ヶ月】 ÷ 30日 ×(2/3)= 7,333円
傷病手当金の一日当たりの金額が7,333円となり、180日休んだ場合は待期期間の3日間が引かれ7,333円×177日間となり、合計で約129万円を受け取れることになります。
健康保険加入期間が12ヶ月未満の場合
傷病手当金を申請する以前の勤続期間が12か月に満たない場合、計算式の「支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額」については次のうちいずれか低い額を用いて計算します。
ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
イ 標準報酬月額の平均額 ※
※当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額
(協会けんぽの場合、2021年度は30万円)
<CASE>
・勤続年数(健康保険の加入期間):6ヶ月
・休業前の標準報酬月額の平均額:32万円
・休業した日数:180日
標準報酬月額は本人のものより全被保険者の平均の方が低いため、上記のルールが適用され「30万円」が基準額となります。
計算式
【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
【30万円】 ÷ 30日 ×(2/3) = 6,667円
傷病手当金の一日当たりの金額が6,667円となり、180日休んだ場合は待期期間の3日間が引かれ6,667円×177日間となり、合計で約118万円を受け取れることになります。
傷病手当金をもらう条件は?期間は?
傷病手当金は業務外の病気やケガに支給される
健康保険に加入している被保険者が業務外の病気や怪我で働くことができなくなり、その間の賃金を得ることができないときに、健康保険から傷病手当金が支払われます。傷病手当金の給付を受けるためには、療養のために働けなくなり、その結果、連続して3日以上休んでいたことが要件となります。ちなみに、業務上や通勤途中での事由による病気やケガは、労働災害保険(労災)の対象となります。
療養のため、とは療養の給付を受けたという意味ではなく、自分で病気や怪我の療養を行った場合も含みます。「働くことができない」状態とは、病気やケガをする前にやっていた仕事ができないことを指します。
支給までには待期期間(3日間)がある
傷病手当金の支給を受けるための「連続して3日間仕事を休む」という条件について解説します。連続する3日を含む4日以上、療養のために仕事ができないことが必要です。この仕事ができない連続する3日間のことを待期期間といい、この待機期間は傷病手当金が支給されません。
待期期間の3日間には、会社などの公休日や有給休暇も含みます。この3日間は必ず連続していなければなりません。ただし、3日間の休みがあれば、出社日を挟んでいたとしても過去に遡って待期期間完成として受給権利を獲得することができます。
例えば不調で休みが続いていて、一日行ってみたけどやっぱり無理だった、という場合、新たに3日の休みを取る必要はなくなりますね。
傷病手当金は1年6か月間まで支給される。
傷病手当金の最大支給期間は1年6か月です。これは支給を開始した日からの日数で数えます。上の図でいえば、4月7日から傷病手当金をもらったとして、翌年の10月6日までの期間が最長の支給期間です。傷病手当金が支給されている期間中に出勤した場合、出勤した期間は会社から賃金が支払われるので、傷病手当金は支給されません。その後、再び同じ傷病で働けなくなった場合には、傷病手当金の支給が再開されます。2022年1月から健康保険法が改正となり、出勤して賃金の支払いがあった場合について支給期間が1年6か月にプラスして延長されます。
また、被保険者期間が1年以上あり、会社を退職した日に傷病手当金を既に受給している、または受給できる状態であれば、退職後も受給期間が満了するまで傷病手当金を受けることができます。
減額や不支給になる条件や注意点
給与の支払いがある場合
もし会社の規則で休業中も給与の支払いがある場合、申請が受け付けられない場合があります。ただし、支払われる給与が傷病手当金の金額よりも少ない場合は、その差額分の傷病手当金が支給されます。基本的には休んだ日に給与が支払われないことが条件となりますのでご注意ください。
有給休暇も給与の支払いがあった日とカウントされますので、制度を最大限活用したい場合は傷病手当金の申請前に有給休暇は使用しておくことが望ましいでしょう。
給与以外の手当(労災・年金・手当)を受けている場合
上記の給与以外にも下記を同じく受給している場合は傷病手当金は支給されません。
ただし、いずれも傷病手当金の日額のほうが多い場合にはその差額が支給されます。
精神疾患の人たちの申請状況は?
傷病手当金の申請件数は年々増加しています。コロナの影響で申請した人が増えたこともありますが、コロナ以前から件数も総額も増加の一途をたどっています。傷病手当金の受給の原因となった傷病別に件数の構成割合をみると、精神及び行動の障害が32.96%で圧倒的な1位となっています(2位は新生物で14.56%)
申請件数が最も多い産業は?
精神及び行動の障害による傷病手当金の申請件数が最も多い産業はなんでしょうか。令和3年度は全ての産業の合計で51,054件の申請がありました。その合計金額は100億円を超えています。協会けんぽのデータによると、第一位は社会保険・社会福祉・介護事業で7,502件で二位以下(医療業・保健衛生)と大きな差をつけています。
社会保険・社会福祉・介護事業は、公的年金や医療保険、介護保険事業を行う「社会保険事業団体」、保育所や託児所、児童相談所などを運営する「児童福祉事業」、老人ホーム、デイサービス、訪問介護などを運営する「老人福祉・介護事業」に分けられます。業界としては拡大基調にあるものの深刻な人手不足など多くの問題が挙げられる業界でもあります。
「低賃金」、「同業者との人材獲得競争」、「業務の大変さ」、「離職率の高さ」などが挙げられます。社会保険・社会福祉・介護事業においてはコストの大半が人件費であり、基準人員が決められているため、給与の引き上げは業績の悪化に直結することから、保育士や介護士の給与を引き上げることは容易ではないという構造的問題があります。さらに、重労働かつ人の命を扱う責任の重い仕事である(にもかかわらず給料が安い)ということも申請件数の多さに繋がっているのかもしれません。
申請日数の平均は?
傷病手当金を申請する平均的な期間はどの程度なのでしょうか。傷病手当金全体では平均の支給期間は150.32日となっています。30日以下の申請割合が3割程度で最も多く、期間が長くなるにしたがって割合は低下します。その中で精神および行動の障害については男性が平均207.99日で女性が190.69日と全体の申請の中ではかなり長い部類に該当します。半年以上から一年の申請が多く、短期間で復帰するのは難しいことが分かりますね。
また、申請一件当たりの期間は平均して34.4日となっています。精神疾患による傷病手当金の一人当たりの平均的な申請回数は5~6回となりますね。
受給金額の総額平均は?
傷病手当金の受給金額の総額はどの程度なのでしょうか。精神疾患および行動に関する障害における一件当たりの申請金額は平均で196,602円となっています。これを上述の期間及び日数を考慮すると、 総額で約110万円程度は受給している計算になります。あくまで平均であり、治療の目安として会社や家族に理解を促すには有用なデータと思われます。しかし、この200日前後で治療を終える必要はなく、無理をせず一年半の期間を活用してもなにも問題ありません。
まとめ 金額の確認と生活の見直しポイント
自分がもし今、休職して傷病手当金をもらうとしたらいくら程度になるか分かりましたでしょうか。申請の条件となる待期期間の考え方や不支給や減額になってしまう条件などに加え、精神疾患による平均的な傷病手当金の申請期間や総受給額についてもまとめました。
うつ病や適応障害でメンタルダウンすると、普段苦もなく読めていた文章が頭になかなか入ってこず、各種申請も苦戦することがあります。可能であれば、症状が悪化してしまう前に、もしもの時の備えとしてご自身の傷病手当金に関する確認やシミュレーションをなさっておくと万一の際でも安心です。